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ヨーロッパ文芸フェスティバル2021

ヨーロッパ各国の作家や翻訳者が日本の識者と共に朗読やレクチャー、対談、パネルディスカッションに参加。今回で5回目となるこのフェスティバルでは、さまざまなイベントを通じて注目のヨーロッパ人作家や作品を紹介します。オランダからトーン・テレヘン氏(Toon Tellegen)が参加し、新潮社刊『ハリネズミの願い』、『きげんのいいリス』、『キリギリスのしあわせ』、『おじいさんに聞いた話』について翻訳者の長山さき氏が話をうかがうトークイベントも開催予定。コロナ禍で出版前に実現できなかった『キリギリスのしあわせ』についてのインタビューや、日本ではまだ知られていないテレヘンの詩の紹介などを通じて、テレヘン文学の魅力を一層感じていただけるひとときにしたい、との思いが込められたイベントです。

昨年に続き主としてオンライン配信での開催です。

また、昨年公表されたヨーロッパ人作家の作品(短篇または長編の抜粋)の期間限定公開も、新しいラインアップを揃えて更新中。ほとんどが日本で初めて紹介されるものです。

オランダ代表のトークイベント情報

11月22日(月)オンライン配信、20:00-21:15 オランダ語、日本語(通訳あり)

 

イベントレポート

トーン・テレヘンと長山さきのトークイベント 〜「テレヘンの世界」

今年で5回目を迎えた欧州文学フェスティバルは、ヨーロッパの文学を日本の皆さんに身近に感じてもらうことを目的に、今年も昨年に引き続き、オンラインを中心に開催されました。

今年のフェスティバルではオランダを代表して、作家のトーン・テレヘンさんと翻訳者の長山さきさんが参加。彼の翻訳作品や、まだ未翻訳の詩を紹介しながら、どのようにオランダから日本の読者へと物語が届くのか等、成り行きについて話されました。

2018年の来日が中止になって以来、念願だったお二人のお話しをやっと今イベントを通して日本の読者の皆さまにお届けすることができました。テレヘンさんのどうぶつ物語によってオランダ文学が身近になり、日本とオランダの文学的交流が生まれたことについても知ることが出来た上、翻訳者の長山さんからは、作家テレヘンさんとの対話の中で、どうぶつ物語の無限の魅力や、日本で最も高く評価されている詩人の一人でありテレヘン作品を日本で支持している谷川俊太郎氏の作品との共通点等、翻訳中に直面した課題などについても情熱的に語ってくれました。今回は特別にテレヘンさんへのプレゼントとして、日本の様々な名作(夏目漱石、小川洋子、村上春樹、村田沙耶香などの作品)をオランダ語に翻訳されたルック・ファン・ハウテさんに谷川俊太郎さんの詩集『ベージュ』より「川の音楽」を翻訳してもらい、朗読もしていただきました。

オンライン開催を余儀なくされた今イベントでしたが、日本からだけではなく世界のどこからでも参加することができたという利点もありました。オランダからの参加者もいました。Q&A中に「どうぶつ物語で、オランダ的なところがあれば、どのような事ですか」という質問に対し、「ゾウのテウニスのように少しがさつなところかな」という応答には、バーチャルな場でありながらも、笑いが起こっていました。

締めくくりに長山さんは、テレヘンさんの翻訳者として彼の詩を日本語に翻訳するまで、彼女の仕事は終わらないと語り、観客の皆さんに今後の期待を持たせてくれました。

トーン・テレヘンの作品:https://www.shinchosha.co.jp/writer/5333/ 

【トーン・テレヘン Toon Tellegen】

1941年、医師の父とロシア生まれの母のもと、オランダ南部の島に生まれる。ユトレヒト大学で医学を修め、ケニアでマサイ族の医師を務めたのちアムステルダムで開業医に。1984年、幼い娘のために書いた動物たちの物語『一日もかかさずに』を刊行。以後、動物を主人公とする本を50作以上発表し、文学賞を多数受賞。オランダ出版界と読者の敬愛を一身に集めている。『ハリネズミの願い』で2017年本屋大賞翻訳小説部門受賞。おもな作品に『きげんのいいリス』『おじいさんに聞いた話』。

【長山さき Saki Nagayama】

1963年、神戸生まれ。関西学院大学大学院修士課程修了。文化人類学専攻。1987年、オランダ政府奨学生としてライデン大学に留学。以後オランダに暮らし、現在アムステルダム在住。訳書にトーン・テレヘン『ハリネズミの願い』『きげんのいいリス』『キリギリスのしあわせ』『おじいさんに聞いた話』、ハリー・ムリシュ『天国の発見』『過程』、ペーター・テリン『身内のよんどころない事情により』、シェフ・アールツ『青いつばさ』、ヘンドリック・フルーン『83・1/4歳の素晴らしき日々』など。